「P社の食洗機推奨の洗剤ありますか?」と電気屋の女店員に尋ねると、彼女は電気屋に唯一置いてある得体の知れないメーカーの洗剤を差し出して「これです!」と断言したのである。
 しかし、違うのだ。あからさまにそれではないのである。
「絶対にこれじゃないです!」
 と私が言うと、カタログの該当ページを見せ「お取り寄せになりますがよろしいですね」と言うのだ。確信犯だ。あからさまにウソつきなのである。
 この女店員、19世紀末のイギリスに生きておれば、日曜夜のマーケットで、赤い絵の具を塗りたくった腐れ魚を売りつけようとしかたもしれぬ。伝統的な悪い商人なのだ。
 こういう輩から私が商品を買うことはない。
 私は「これは推奨と違いますけど、お手頃価格ですし、私もP社の食洗機で使って何の問題もないですよ」といったよく出来たウソを好む。もちろん店員はその洗剤を使ったことがない。それでいい。リアリティがほしい。必ずしもリアルである必要はない。
 むしろ騙されたいほうなので上手に騙してほしいと思う。


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