少女たちへのプロパガンダ―『少女倶楽部』とアジア太平洋戦争 (教科書に書かれなかった戦争)

 資料的に貴重な本。
 少女雑誌に登場する美談としても、「自爆攻撃」があったのですね。
 現在の日本のアニメや特撮作品でも、仲間を助けるために自爆するシュチュエーションがわりといいシーンとして描かれたりしますが、そういうタイプの自己犠牲を日本人は好きすぎるのではないでしょうか。無駄な自己犠牲としての玉砕やバンザイアタックに繋がり、損耗のうえの損耗なのですが、日本人には死にたがりなところがあるように思えてなりません。
 戦時下の兵器と武力への礼賛が少女雑誌にあったのは、まあそうでしょうねという気がしました。敵が持つ武器は脅威ですが、味方の持つ武器は守りであり、安心をもたらすものだからです。

 ここから本の話から少し離れます。
 戦争を当時の政府と軍上層部が国民を騙して行ったもの、ということにして切り捨て、罪なき者のようなふりをして戦後70年を過ごしてきた日本国民(私もそのひとり)ですが、最近、当時のA級戦犯を糾弾するのはおかしいと言う人が出てきましたね。その発想でいうと、日本人全体の戦争責任はいまだ問われておらず、極めてややこしいことになるんじゃないかと私は懸念しております。それとも戦争は歴史の必然で、誰にも罪がないと? どういう無責任ですか、それは?? 厭らしい欺瞞がそこにあるように思えます。過去のことを忘れないようにしたいものです。

ロンドン貧乏物語―ヴィクトリア時代 呼売商人の生活誌

著者であるヘンリー・メイヒュー氏は1812年にロンドン生まれ、週刊誌『フィガロ・イン・ロンドン』の編集や『パンチ』誌の創刊に深くかかわった人物。そして、本書はヴィクトリア時代の物売りの人たちを取材したもので、圧倒的な分量の具体的知識を得ることができる。これを読めば、「死者の帝国」がもっとリアリティあるものとして脳内で再生できるようになるし、スチームパンクものももっと楽しめる。今回は図書館で借りたけれども、買うのがいい一冊です。
ジンジャービール、シャーベット、レモネード、ルバーブ、ステッキ、パイプとタバコ、水や文具、文学、美術など、当時はなんでも街頭販売されていたことがわかります。そして原価と売上なども。素晴らしい、すばらしい!

写真で見る ヴィクトリア朝ロンドンの都市と生活

多数の写真が如実に当時のロンドンの姿を伝えてくれる。とにかく街が煤けている。そして、どうしようもなく不潔だ。石畳の道路や路地の真ん中が低くなっており、排水路の役割を担っている。労働者階級は狭苦しいしかし家賃が高い部屋に大人数で住み、テムズ川や近くの水たまりの汚染された水を飲み、劣悪な環境で長い時間働かされる。バッドマンに登場するゴッサム・シティの原型のような街である。小説でいえばディケンズ。この本も持っていたほうがいい本だ。資料的としての価値がある。

図説 英国貴族の暮らし (ふくろうの本) 図説 英国貴族の令嬢 (ふくろうの本) 図説 イギリスの歴史 (ふくろうの本)

 河出書房新社のふくろうの本、イギリス関係の三冊を読む。図版たっぷりだが三段組で文字量もたいしたもので、意外に読み応えがあった。今回は図書館で借りてきたが、これらは所有したほうがいいと思われる。情報量が多すぎて覚えられるものではないし、コピーする手間を考えたら買ったほうが安いだろう。
「英国貴族の~」というタイトルの二冊については、貴族とはなんだろうかと考えさせられた。

図説「最悪」の仕事の歴史

 ローマからヴィクトリア朝ぐらいまでの辛い仕事が列挙されている本。
 少しだけ挙げると、

  • ローマ時代の反吐収拾人やウミガラスの卵採り
  • 中世の踏み車漕ぎ
  • チューダー朝の死刑執行人
  • スチュアート朝の死体取り調べ人
  • ジョージ朝の掘り出し屋
  • ヴィクトリア朝の骨拾い…

 こんなの序の口。仕事の辛さが満載されており、素晴らしい。私の琴線に触れたのは死体掘り出し屋が「リザレクションマン」と呼ばれていたこと。復活男。カッコいい。

暮らしのイギリス史―王侯から庶民まで

 本書に書かれているのは、寝室の歴史、浴室の歴史、居間の歴史、台所の歴史である。
 Amazonでのカスタマーレビューは芳しくないようだが、雑学集としてはよくできている。現代との差異を楽しむことができる。

 事大主義者には興味がないと思われる小さなネタやちょっと嫌なネタは小説に描写しようと思ったりしたら確実に役立つし、読者として思い浮かべる時のイメージも豊かになるはずである。
 これはと思った箇所を引用しよう。

同書 第1部 寝室の歴史「性病」P85より

幼児、赤坊と性交すれば梅毒を完治できる――がジョージ朝にはおぞましくも浸潤していて、犠牲になった子どもは少なくない。子どもには治癒力があり、梅毒を消し去って病状が好転すると考えられたからである。

それをすれば治ると思って、梅毒病みのオッサンが幼女を犯しに来る――こういうもろに呪術の世界が英国にもあったのだというのが恐ろしくも興味深い。